≪インタビュー≫MVV施策から広報体制まで。部署を横断した組織づくりの実践

クライアント

株式会社日本ピーエス様

本事例では、日本ピーエスがMVV浸透を起点に、経営の考えを整理しながら組織全体に共有していくために、ワークショップや体制づくりを通じた広報・組織設計を中心としたスポットPMに取り組みました。

クライアント:株式会社日本ピーエス 様
支援内容:MVV浸透支援、広報支援、スポットPM

左から、管理本部長 立石様、広報担当 桜井様、経営企画室室長 高木様
橋梁を中心とした土木事業を軸に、長年にわたり社会インフラを支えてきた日本ピーエス。   近年は、橋の新設だけでなく、橋の設計・製造・建設・完成後のメンテナンスまで、橋の一生に寄り添う橋梁のトータルプロデュース企業として、事業領域を広げています。

事業の幅が広がるにつれ、日本ピーエスでは橋の設計・製造・建設・維持管理までを担う複数のグループ会社が関わる体制へと変化していきました。 橋の一生に向き合うために、異なる強みを持つ会社同士が連携する中で、グループ全体として何を大切にし、どこを目指していくのかを共有する必要性があらためて浮かび上がってきました。 そこで同社は、経営企画室が中心となって進めていた「グループMVVの策定」を機軸に、その浸透と、一貫性のある広報体制の再構築に着手します。   その過程で、日本ピーエスが選んだのが、業務を代行する外注ではなく、状況を整理しながら一緒に考える伴走型のパートナーとしてのrayoutでした。   そして経営と現場、発信をつなぐ仕組みをどう構築していったのか。 rayout との伴走を通じた、そのプロセスと背景について伺います。  

採用をきっかけに始めた広報が、組織づくりにつながった理由

MVV浸透や組織づくりに取り組むにあたって、貴社ではまず「広報」という機能をどのように位置づけていたのでしょうか。

最初に広報に期待されていた役割は、採用広報でした。
建設業界全体で人材不足が深刻化するなか、経営層としては採用活動の強化を優先課題のひとつと捉えていました。
会社の知名度や事業内容の理解が十分とは言えない状況もあり、まずは採用につなげる発信が求められていました。

一方で、実際に動き始めてみると、少しずつ違和感も出てきました。
採用だけを切り出して発信しようとしても、そもそも「どんな事業をしている会社なのか」「何を大切にしているのか」が整理されていないと、どうしても言葉が薄くなってしまう。グループMVVの策定が進む中で、そうした感覚がよりはっきりしてきたと思います。

そのため、最終的なゴールは採用かもしれないけれど、そこに至るまでの道のりをきちんと整えないといけない、という認識が、少しずつ社内で共有されていきました。

採用広報からスタートしつつ、事業や会社そのものをどう伝えるかが論点になっていったと思います。その中で、あらためてMVVの浸透に取り組もうと考えられた背景には、どのような課題意識があったのでしょうか。

当時、経営企画室では並行してグループMVVの策定を進めていましたが、広報側で「どんな会社か」を語ろうとしても、策定中のMVVと地続きになっていなければ、言葉に重みが出ません。

また、当時は経営企画、総務、採用が個別に発信を行っており、点と点が繋がっていない状態でした。経営企画としては「策定したMVVをどう浸透させるか」という課題を抱え、広報側は「軸のある発信をしたい」と考えている。この両者の課題が、一つの線に繋がったのがこの時期でした。
単なる採用手法の話ではなく、会社としての軸を整え、それを社内外に届ける「仕組み」が必要だと感じたのです。

実は、以前から、グループ各社でそれぞれの社訓やMVVは存在していました。ただ、それが日常の会話や判断の中で使われていたかというと、そうではなかったと思います。
グループ会社が増え、事業の幅も広がっていく中で、会社としての軸が人によって少しずつ違って見えている状況もありました。

そうした状況を、社長の有馬自身も強く意識していたと思います。
現場や各部署と向き合う中で、「この判断は、何を基準にしているのか」「会社としてどこを向いているのか」を、その都度すり合わせる必要が出てきていました。
発信や採用の話を進める中でも、社長の考えをどう整理し、どう共有していくかは、避けて通れないテーマでした。
発信を強化することで、採用につなげようと考えても、共通の前提が揃っていないと、どうしても言葉がバラバラになってしまう。
まずは、何を大切にしている会社で、どこを目指しているのかを改めて共有する必要があるのではないか、という話になっていきました。

グループ会社が増え、事業領域が広がっていく中で、各社の強みをどう束ねていくかは重要なテーマになっていました。
日本ピーエスでは以前から、組織や風土の変化は短期間で起こせるものではなく、10年単位で向き合っていくテーマだという認識が共有されていました。
その意味で、グループMVVの策定と浸透は、経営と現場が同じ前提で考えるための土台づくりだった、という位置づけに近いのだと思います。

「業務委託」ではなく、「一緒に整理する存在」を求めて出会った rayout の伴走型広報

専任の広報担当が入った後も課題を感じられていたとのことで、具体的に伺わせてください。

弊社内で広報の役割が徐々に明確になってきた中で、広報は兼任ではなく専任で担うべきだという判断がなされ、専任の広報担当が配置されました。
これは社内にとっても大きな一歩でした。ただ同時に、広報を一人に任せきるのは現実的ではない、という認識も最初からありました。

広報は発信物をつくるだけの仕事ではなく、経営、現場、採用など、さまざまな部署と関わりながら進めていく必要があります。

実際、現場で起きていることが十分に言語化されないまま、対外的な発信につながっていないという感覚もありました。
発信について考える中で、経営企画や総務、採用など、それぞれの立場で情報発信が行われていることが改めて見えてきました。
どれかが間違っているわけではないものの、会社としての考え方や判断の前提をどう整理し、共有していくのかは整理しきれていなかった部分だったと思います。
そうした整理や調整を、誰が担うのかという点が、次の論点として出てきました。

その中で、外部の伴走支援を検討し始めた経緯を教えてください。

外部パートナーの検討は、専任の広報担当が入社する前から視野に入っていました。
実際に何社かと面談も行いましたが、なかなか決めきれなかったというのが正直なところです。

理由のひとつは、誰が実際に伴走してくれるのかが見えにくいという点でした。
提案内容や実績は申し分なくても、窓口の担当者と実際に関わる人が異なり、「この人たちと日々一緒に考えることになるのか」が想像しづらかった。

また、あらかじめ用意された進め方や型があり、こちらの状況に合わせて柔軟に変えていくイメージを持ちにくい、という感覚もありました。
広報やMVV浸透は、作業を切り出して任せられるような業務支援ではなく、社長の考えや経営の意思を受け取り、それを社内外に翻訳していく役割でもあります。
だからこそ、「任せる」というより、「一緒に考えられるかどうか」が重要な判断軸になっていました。

そうした中で出会ったのがrayoutでした。打ち合わせの中で、こちらが話している途中から内容が整理され、「今はこういう状態ですね」「論点はここですね」と、その場で言語化されて返ってくる。

本取材時の様子

数回のやり取りを通じて、「この人たちなら、状況に合わせて一緒に考えながら進めていけそうだ」という感覚が生まれました。

業務を代行してもらう、あるいは決められた支援を受ける、という関係ではなく、経営や現場で起きていることを整理し、次に進むための視界を一緒に整えていく存在。
その距離感が、弊社にとってはしっくりきたのだと思います。

いきなり「浸透」させない。まずは現在地を揃える

MVV浸透に向けて、最初に取り組んだことは何だったのでしょうか。

最初に行ったのは、全社員アンケートでした。理解度を測るというより、「今、何を不安に思っているのか」「どこに違和感があるのか」を率直に出してもらうことを目的にしています。

MVVはどうしても抽象的になりがちです。最初から正解を示してしまうと、考える余地がなくなってしまいます。
そこで、まずは変わる前の状態、いわば“現在地”をきちんと把握することを重視しました。
アンケート結果は、その後のワークショップの材料として活用されています。

ワークショップの設計で、意識したことはありますか。

ワークショップは、いきなり全社員向けに行うのではなく、まずはマネジメント層から実施しました。その後、メンバー層へと広げていく形です。
最初から全社員向けに行っていたら、「言われたからやる」という場になっていたかもしれません。マネジメント層が先に考え、言葉を持った状態で臨むことで、双方向のやり取りが生まれました。

全国でおよそ15回のワークショップは、負荷も小さくありませんでしたが、回数以上に「どう設計するか」「どの順番で進めるか」を重視した取り組みでした。

全社員ワークショップ実施時の様子
rayout が日本ピーエスとともに取り組んだ、MVV浸透施策と広報体制整備のプロセス。
全社員アンケートやワークショップを起点に、発信の仕組みづくりまで段階的に進めている。

第三者がいるからこそ、整理できたこと

社内だけで進めるのと、rayoutが入るのとでは、違いはありましたか。

社内だけで進めていると、立場や関係性を意識して、どうしても言葉を選んでしまう場面があります。率直な意見をそのまま出すことが難しいと感じることもありました。
その点で、rayoutは外部の立場から、今の状況をどう整理できそうかをフラットに言語化してくれました。社内では言いにくいことも含めて整理してもらえたことで、議論を次に進めやすくなったと感じています。

また、広報専任として入社して間もないタイミングだったこともあり、一人で抱え込まなくていいという安心感がありました。判断に迷ったときや、意見が割れたときに、隣で一緒に考えてくれる存在がいることは、実務面でも助けになっていました。
ワークショップの進行でも、参加者の反応を見ながら問いの投げ方や時間配分を調整し、その場で出た意見をすぐ次につなげていく。
社内としても、こういう進め方があるのかと学びになる場面が多くありました。

現時点で、どのような手応えを感じていますか。

明確な定量成果を示すのは長期的な目線で考えており、現在はアンケートなどを使いながら、社員の意識や変化を捉えています。

一方で、定性的な変化は少しずつ感じられるようになってきました。
会議の中でMVVに触れる発言が自然に出てくるようになったり、若手向けの研鑽会で「MVVを前提に考えているな」と感じる場面があったりします。
こうした変化が生まれている背景には、rayoutと一緒に言葉を整理し、考えるプロセスを重ねてきたことがあると感じています。

最初から答えを示すのではなく、どう考え、どう言葉にするかを一緒につくってきたことで、MVVの意味や日々の仕事とのつながりを、自分たちなりに考えようとする姿勢が少しずつ生まれてきました。
MVVが“掲げられている言葉”ではなく、“考えるための前提”として使われ始めていることは、ひとつの手応えだと感じています。

広報体制は「仕組み」にしていくフェーズへ

最後に、今後の広報体制や貴社が目指していることをお聞かせください。

現在は、発信の仕組みづくりを進めている段階です。どこで情報を集めるのか、何を発信するのか、誰がどう判断するのか。これまで曖昧だった部分を、少しずつ整理しています。
部署が多く、関わる人も多いため、情報を集約するだけでも簡単ではありません。
それでも、定例で確認し、決めたことをスケジュールに落とし込む、というサイクルを繰り返しています。

資料のやり取りではCheckBackも活用しています。バージョン管理がしやすく、コメントが蓄積されていく点は、実務上も助かっています。

MVVの浸透も、広報体制づくりも、まだ途中段階です。ただ、考え続ける状態を社内につくれたこと自体は、ひとつの大きな変化だと感じています。これからは、つくった仕組みをどう育てていくか、どう定着させていくかが重要になってきます。
広報や組織づくりは、一度整えたら終わり、というものではありません。事業や人が変われば、伝え方や考え方もアップデートしていく必要があります。
橋をつくる会社として培ってきた技術と同じように、組織や人についても、時間をかけて向き合っていきたいと思います。

その過程で、rayoutには引き続き、一緒に考え続けるパートナーでいてほしいと考えています。答えを示してもらうというよりも、状況を整理し、次に何を考えるべきかを言語化する。その伴走を続けてもらえることに期待しています。

今後もご一緒できるのが楽しみです。引き続き、どうぞよろしくお願いします!

メンバー

  • Horii Shiori

  • Takahashi Mao

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