経営統合プロジェクトが「進んでいるのに進まない」理由 対等な統合が招く“遠慮”と“決定不在”を打破する方法

記事
馬場 航

問題は「テーマが多いこと」ではない

経営統合や組織再編。
上場維持のためのガバナンス整備から、新グループとしてのブランディングまで、一分の隙も許されない「総力戦」ですよね。

そんなプロジェクトを任されたものの、「会議は開かれ続けていてテーマも出ているのに、なぜか前に進まない」という停滞が起きていませんか?

経営統合では当然ながら、

  • 財務統合
  • IT統合
  • 人事制度整理
  • 事業連携テーマ
  • ガバナンス整備

など、複数のテーマが同時に走ります。
そのため、「やることが多すぎるから進まない」と捉えられがちです。

しかし実際には、テーマの多さそのものが問題ではありません。
では何が問題なのか、この記事で読み解いていきます。

なぜ「専門家」に頼んでも停滞するのか?

デューデリジェンスの流れで、大手会計系コンサルティングファームにPMIを依頼する場合も多いのではないでしょうか。
しかし、ここで「期待値のミスマッチ」が起きがちです。

会計系ファームは制度設計などの「正論」には強い一方、時間がない中での泥臭い現場推進や、互いの社内文化を知らない者同士を繋ぐ「実行の橋渡し」までは必ずしも慣れていないことが多いからです。

結果として、高い報酬に対して「実務が前に進まない」という不満が生じやすくなります。

実務が動かないと感じる原因は、彼らが「理論のプロ」であっても、現場を動かす「推進のプロ」ではないことにあります。

陥りがちな「本末転倒」の罠

経営統合というビッグプロジェクト。

つい、新しいビジョンやブランディングといった「華やかな施策」に目を奪われていませんか?

統合を成功させるために今不足しているのは、綺麗な戦略図ではありません。
足元のガバナンスや実務を確実に進めていくことです。

「対等な統合」が招く意思決定の空白地帯

特に両社が対等な立場である場合、現場では特有の停滞が発生します。
どちらがボールを拾うべきか曖昧なまま、互いに遠慮して「どうぞどうぞ」と譲り合ってしまい、結局は経営層の「鶴の一声」を待つしかないという意思決定の空白が生まれるのです。

ワーキンググループごとにリーダーがいても、事務局である経営企画部が、進捗確認や役員への「つなぎ役」というオブザーバー的な立場に徹してしまい、自ら舵を取ってプロジェクトを動かす推進役が不在になっているケースも少なくありません。

経営企画に負荷が集中する構造

統合プロジェクトでは、自然と経営企画部に役割が集中します。

あなたもこんな仕事を抱えているのではないでしょうか?

  • 各ワーキングの進捗確認
  • 会議体の設計
  • 論点整理
  • 経営会議向け資料準備
  • 関係者調整

このような進行管理や交通整理に追われてしまい、本来の役割である「意思決定」が、事務作業の山に埋もれてしまう。
これが、プロジェクトの質とスピードを著しく低下させるボトルネックです。

「進んでいるはずなのに停滞する」瞬間

統合プロジェクトでよく起きるのが、

  • 情報が揃わず判断が遅れる
  • 論点が整理されない
  • 各ワーキングの粒度がバラバラ
  • 優先順位が見えない

という状態です。

その結果、「会議は増えるのに進まない」「施策はあるのに実行されない」という現象が起きます。

これらはプロジェクトを任された個人の能力の問題にされがちですが、進め方が設計されていないだけなのです。

プロジェクトを動かすのは“戦略”より“推進機能”

ここまで、よくある課題を振り返ってきました。
では、どうしたらプロジェクトは動いていくのか?

統合の成功に必要なのは、新しい戦略や追加の施策だけではありません。

  • 誰が何をいつ決めるかという「意思決定パス」の明示
  • 詰まりやすい論点を「早期に特定」し、現場に任せきる設計
  • 決まったことを確実に「行動に繋げる」

これらを着実に行う推進機能を補完することで、組織は再び動き出します。

全体は変えず、“止まりやすい部分だけ第三者が整える”

多くの組織では、既存体制を大きく変えることは現実的ではありません。
だからこそ重要なのは、全体を作り直すことではなく、止まりやすい部分にだけ推進機能を補完すること。

さらに、利害関係のない第三者が推進役を担うことも、膠着状態を打破するために有効です。
社内同士ではどうしても遠慮が生じる「ボールの拾い方」や、忖度が働いてしまう「優先順位の判断」において、第三者が客観的な視点で論点を整理し、意思決定の背中を押すことでプロジェクトの停滞は解消されます。

これによって、

  • 経営企画は判断に集中できる
  • 各ワーキングは実行に集中できる
  • プロジェクト全体のスピードが上がる

という状態が生まれます。

統合のテーマや難易度は企業ごとに違います。
しかし共通して言えるのは、プロジェクトが止まるか進むかは、“何をやるか”より“どう進めるか”で決まるということです。

心当たりのある方は、推進の機能を見直してみるのはいかがでしょうか。


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自社の体制や施策が今どの状態にあるのか、まずは整理・診断するところからでも構いません。
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執筆者

馬場 航

馬場 航

執行役員 │ PMO事業本部 事業本部長

2020年3月にボードメンバーとしてrayout株式会社に参画。コミュニケーションデザイン事業部の責任者として事業成長を牽引し、同部門を5億円規模まで拡大。現在は、社内プロジェクトの遂行を支援するPMO事業部の本部長を務め、これまでに500社・2,400件以上のプロジェクトに伴走している。

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