如何にロマンチックな社会を作っていけるか?
まだまだ AI と人間の生産性が比較される時代ではありますが、労働生産性で語られる仕事は、遅かれ早かれAIに代替されていくことでしょう。
前章では、誰もが仕事をしない未来は成り立つのか?という問いに対してNoのスタンスを取り、
「その人らしさを如何に付加価値に変えていけるか?」
「ロマンチックな社会を、いかにデザインするか?」
という命題を立てました。この問いを考えていく為に、一つのアナロジーを用意して考えてみることにします。
あなたが100人の国の王様だったら?
私は 100 人の国の王様だとします。
これまでは、一人一人の給与には多少の差がありつつも国民がそれぞれの仕事を営むことで国家を営んでいました。
しかしある日突然、全ての国の王様が魔法を使えるようになりました。国民の営んでいる仕事は、王様であるあなたが魔法を使うことで、農作業も接客も、石油の採掘も介護も何もかも魔法を使えば簡単に実現できる状況になり、それぞれの仕事に責任者を一人置いておけば、全ての仕事は回っていくことになります。
私は国民が大好きなので、これまで通り仕事を通じてアイデンティティを実感して欲しいし、人間的にも成長してほしいと思っており、たとえ魔法に及ばなくても何らかの付加価値を提供し、自己表現を勝ち取ってほしいと考えています。もちろん「魔法を使わない」という選択肢も考えられますが、他国の王様も魔法が使える以上、経済的に国民の生活を守るためには魔法を使わざるを得ません。
では、今日から国民のどのような仕事に報酬を支払う仕組みを作っていくべきなのでしょうか?
これからの時代のグランドデザインをしていく上で、このような状況が中長期的に考えるべきアナロジーなのかなと思っております。
この命題に対しての最もわかりやすく安直な発想としては、「国民として優良であればお金を支払う」や「挨拶やお礼といったシンプルな行動に報酬を出す」ということ。これは、生存権を勝ち取るためのわずかな努力義務を設計するやり方とも言えます。
しかし、これらは「社会に価値提供している実感」という観点が欠けており、持続可能な経済とは言えませんし、何よりロマンチックではありません。
価値創造型のロール
ではどうすれば良いのか?と問われれば、考え方としては、世の中が付加価値として認めやすい(社会のコンセンサスを取りやすい)仕事を促進していくと考えます。
その中でも「価値創造型」のロールに可能性を感じており、価値創造型のロールとして大きく以下の 2 つに大別できると考えております。
① 0から新しいものを世の中に創造するクリエイターエコノミー
② まだ仕事になっていない課題を仕事に変換する、「PM」としての価値創出
① 0から新しいものを世の中に創造するクリエイターエコノミー
これは、シンプルに文化的な活動や芸術的な活動が創造しやすいもので、創作活動やエンタメなどこれまでになかったプロダクトアウトな創造がこれにあたります。
プロダクトアウトな活動は経済活動に直結しにくく一部の人しか継続できないロールでしたが、これからの社会を考えると付加価値としてのコンセンサスが得やすいという観点で、この領域の産業の裾野を広げていく意義は大きいでしょう。
② まだ仕事になっていない課題を仕事に変換する、「PM」としての価値創出
こちらは新しい産業・ビジネスの創出、解決されていない課題の明確化とプロジェクト化などがこれに該当します。
そもそもプロジェクトとして起算されていない(= どこに魔法を使えばいいか分からない)ものには付加価値が生まれません。だからこそ、課題を発見し仕事として創り出す行為は、国王であるあなたにとっても非常に価値のある営みになります。
これらはわかりやすい領域でいうと、起業や新規事業などの、課題をプロジェクトとして解決していくような仕事であると言えます。
価値創造型のロールで誰もが取り組める「PM」の可能性
冒頭の「これからの20年、30年を見据えて、どのような仕事に就くべきでしょうか?」への回答については、私は② の「まだ仕事になっていない課題を仕事にする」というロールを推奨します。
わかりやすいところで言うと、起業家や新規事業の立ち上げなどがこれに当たりますが、とはいえ、「起業したら?」「新規事業を立ち上げられるところに入社したら?」と言うのは少し乱暴なコミュニケーションになってしまいます。
起業にしても新規事業の立ち上げにしても、共通して言えることは「課題をプロジェクトで解決する」仕事だと思っております。ここに斬新なアイデアを引っ提げた新規事業も、誰もが気が付いていないような課題を解決するスタートアップも、根本は誰かの課題をプロジェクトとして解決する行為に他ならないものです。
誰かの課題をプロジェクトで解決するロールである「PM(プロジェクトマネージャー)」こそが、私は「仕事を創る仕事」の中で最も平準化しやすく、流動性の高いスキルになっていくと考えております。
そのため、冒頭の問い「これからの20年、30年を見据えて、どのような仕事に就くべきでしょうか?」と言う問いに対しての私のアンサーは「課題を仕事に変える経験を多く積める”PM”が経験できる職業が良いと思うよ」になります。
次の章では、「PM」とは一体なんなのか? 様々な業界で使われている統一されていないロールのPMという概念を分析しながら、最終的には思い切って次世代向けに再定義していきたいと思います。