M&A後、経営者がプレイヤーになってしまう理由 管理体制づくりを推進する人材がいない企業で起きていたこと

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馬場 航

M&Aを実施した企業が直面する課題は、買収そのものではありません。

本当に難しいのは、その後の統合プロセス。
管理体制の整備や、人事労務の引き継ぎ、会計システムの統一、契約やガバナンスの整理など……山積みですよね。

やるべきことは明確でも、人手が足りず、結果として経営者自身がプロジェクトマネージャーになってしまうケースは少なくありません。

今回は、M&A後の管理業務が経営層に集中していた企業の実際の例をお伝えしながら、チームを巻き込みプロジェクトを推進していくための体制構築方法についてお話します。

M&A後の管理業務を、経営者が一人で抱えていた

今回の事例の企業では、M&Aの検討から取得後の引き継ぎまで、多くの業務を特定の経営メンバーが担っていました。

具体的にどのような状況になってしまうことが多いか、いくつかご紹介します。

「士業の翻訳係」になっている

税理士は税務のリスクを、社労士は労務のルールを、弁護士は法務の懸念を伝えてきます。
しかし、彼らは「自社の領域」の助言はできても、他領域との調整は行いません。
結果、経営層がそれぞれの専門家の間に入り、伝言ゲームと調整に追われてしまうことはよくあることです。

終わらない「システムとルールのすり合わせ」

「給与の締め日が違う」「会計ツールは何を使っているか」「稟議のフローが違う」。
こうした統合先とのズレの問題は次々に発生してきます。
このような大量で細かな業務プロセスのすり合わせを上手く分担できず、経営層が抱え込んでいませんか?

肝心の「事業成長・シナジー創出」が後回し

営業や事業推進を担う人材はいても、経営管理やリスク管理を横断的に進められる人材がいない。
本来は「M&Aによって事業をどう伸ばすか」に時間を使いたいのに、管理業務の方に時間を割かなければならず、手が付けられない状況になってしまっている場合が多いです。
このタイミングで事業成長のスピードが鈍化してしまうのはもったいないですよね。

なぜM&A後のプロジェクトは停滞するのか

問題は、「社内にノウハウがないこと」や「専門家がいないこと」ではありません。

それでも進まない根本的な理由は、「誰が全体を前に進めるのか(推進機能)」がすっぽり抜け落ちているからです。

引き継ぎ事項の網羅的な洗い出し、タスクの優先順位付け、関係各所とのスケジュール調整、進捗管理、そして会議体の設計。
こうした業務は、アドバイスをする「専門家」の仕事ではなく、泥臭く手を動かす「推進役(PM)」の領域です。

この役割が不在だったことで、経営者がすべての実務と情報が集まるハブにならざるを得なかったのです。

「推進役」と、「経営層の右腕チーム」をつくる

今回私たちが行った支援では、専門業務の代行ではなく、プロジェクト推進機能の構築を行いました。

その実例から、推進役となるPMがどう動くべきか、実践していただける方法をお伝えします。

1. 経営者の頭の中を「タスクと責任者」に分解する

まずは、買収後に発生する業務(システム統合、人事評価のすり合わせ、オフィス移転など)をすべて可視化しましょう。
そして、「何を・誰が・いつまでに進めるのか」をスプレッドシート等で明確にし、それぞれの責任者をしっかりと決めます。
経営者の頭の中にしかなかった情報をPMがチーム全体の共通認識へと変換することで、このプロジェクトは進み始めます。

2. 「報告」ではなく「意思決定」のための会議設計

次に行うのは、経営者が個別確認しなくても状況を把握できるよう、会議体を再設計すること。
定例会議を設定し、「どこでスタックしているか」「経営層のどのような判断が必要か」という論点だけを協議する仕組みを整えることで、会議を前に進めるための時間にします。

「今週何をやったか」を報告するだけの時間になってしまうのは避けましょう。

3. 今回の苦労を、次回のM&Aに向けた「型」にする

M&A後のPMIを単発の苦労で終わらせずに、事業管理、会計・支払いフロー、人事労務の統合手順などを整理し、今後のM&Aでも再利用できる「運営モデル」づくりをしておくと、次回から自分の手を離れて進めることができます。

支援後に目指した状態

支援を通じて私たちが目指したのは、経営者が実務から抜け出し、本来の仕事である「事業成長に集中できる状態」を取り戻すことです。

経営者がすべての実務に直接手を出さなくても、状況が正しく把握でき、必要なタイミングで的確な判断が下せる。
そして、次のM&Aに備えた型ができている。
これが今回のプロジェクトのゴールだと思います。

経営者が本来の業務に集中するためのPM

M&A後の統合フェーズにおいて企業が直面する課題は、人材不足というよりも「推進機能の不足」であるケースがほとんどです。

必要な専門家はいてやるべきことも見えている。
それでも進まないのは、全体を俯瞰し、関係者を巻き込みながら泥臭く前に進める「PM」がいないからです。

経営者が事業成長に集中できる環境をつくることも、プロジェクトマネジメントの重要な価値のひとつなのです。


M&A後の実務に追われ、本業に集中できていないとお悩みの経営層の方は、ぜひ一度、推進の空白を埋める「スポットPM」の活用をご検討ください。
プロジェクトマネジメントという機能を取り入れることで、組織の実行力は劇的に変わります。
自社の体制や施策が今どの状態にあるのか、まずは整理・診断するところからでも構いません。

お気軽にご相談ください。

執筆者

馬場 航

馬場 航

取締役 │ PMO事業本部 事業本部長

2020年3月にボードメンバーとしてrayout株式会社に参画。コミュニケーションデザイン事業部の責任者として事業成長を牽引し、同部門を5億円規模まで拡大。現在は、社内プロジェクトの遂行を支援するPMO事業部の本部長を務め、これまでに500社・2,400件以上のプロジェクトに伴走している。

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